自治体におけるLGBT政策・施策の展開について
2015-11-06
(前エントリー「地方自治と私」との連作です)
先週木曜の10/29の夜、中野区内でとあるシンポジウムが開かれました。
私の友人・知人が運営に携わっている中野区内のLGBT当事者団体「中野LGBTネットワークにじいろ」と中野区によって共催された「すべての人々が暮らしやすい中野区をめざして」です。
当日はまず、永野靖弁護士が基調講演を行ないました。引き続き、田中大輔中野区長、田辺裕子教育長、山田正興医師、大江千束LOUD代表、永野靖弁護士によるパネルディスカッションが行なわれました(司会:山縣真矢 東京レインボープライド共同代表)。
シンポジウムの中で田中区長は、
「区民や職員が理解する機会を増やし、偏見を排して多様性を認め合える社会を作っていくために努力したい」
「ユニバーサルデザイン型の社会を目指す」
との発言を行ないました。田中区長が言う「ユニバーサルデザイン型の社会」は、「多様性(ダイバーシティ)を尊重する社会」にも言い換えられると思います。
私は普段から中野区議会をよく傍聴します。それで、住み替え支援事業やDV被害者支援などにおいて同性カップルを対象とする旨、田中区長や担当者が答弁しているのを実際に現場で耳にしています。
なので、今回のシンポジウムにおける田中区長の発言も、非常に「らしい」発言だなと思いました。良い意味でリップサービスをせずに、実効性のある個別的施策を目指すという点について、個人的には非常に好感を持っています。
なお、「個別的施策の中で対象に含める」という方向性は、かつて男女の事実婚カップルが取った戦略と共通するものがあります。その意味で、中野区におけるLGBT政策・施策は「事実婚アプローチ」と言えるかもしれません。
さて、日本国憲法第92条には、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」という規定があります。ここで言う地方自治の本旨とは、
(1)住民自治-住民自らが地域のことを考え、自らの手で治めること。つまり、地方自治は、その地域社会の住民の意思によって行われるべきこと。
(2)団体自治-地域のことは地方自治体が自主性・自立性をもって、国の干渉を受けることなく自らの判断と責任の下に地域の実情に沿った行政を行っていくこと。つまり、地方自治は国(中央政府)から独立した地域社会自らの団体(組織・機関)によって行われるべきということ。
の2つを指すと言われています。
つまり、自治体が自らの権能の範囲内で、国からの干渉を受けることなく、住民による意思決定に基づいて政策・施策や行政の在り方を決められるのが地方自治なのです。
となると、政策課題について、各自治体によって異なるアプローチが存在することになります。例えば同性カップルの保障という課題について見ると、
・渋谷区:条例を区議会で通し、その条例にに基づき、当事者が区へ申請を行ない、区がパートナーシップ証明書を発行
・世田谷区:首長の権限で策定される要綱に基づき、当事者が区へ宣誓を行ない、区が宣誓受領証を発行
・中野区:個別分野の政策・施策の対象に同性カップルを含み込ませる(事実婚アプローチ)
と三者三様です。
その自治体を取り巻く事情や状況に応じて(そして最終的には住民の判断に基づき)、政策・施策が各自治体で行われれば良いわけです。そこに優劣は存在しません。
もし、各基礎自治体(いわゆる区市町村)での取り組みに差異があることで不都合が生じるならば、その時は広域自治体(いわゆる都道府県ですね)や国へ、条例や法律・通達等の改正や新たな立法を働きかければ良いのです。
さて、最後にLGBT関連の政策・施策に関して、自治体における行政や議会へのロビイング、若しくは行政との協働を考えているみなさんへ。
以下のような要素を複合して分析した上で、どのような手法をとるべきか判断することをオススメします。行政や議会の状況に応じて柔軟に対応することが、ロビイングや協働では大切です。
・首長(基礎自治体では区市町村長)の意識やヤル気の有無
・議会における会派構成(分かりやすく言えば、「どの会派が○議席持っている」とか、「どの会派がキャスティングボートを握っているか」など)
・意識やヤル気のある行政職員の有無
・上記のような、意欲的な行政職員を後押しできるような議員の有無。こうした議員にロビイングすることも重要です。
(言い換えれば、「行政に対して何でも反対」な議員は、職員の問題意識やヤル気を削ぐ可能性があるという事です^^;)。
市民側がこうした分析を行なった上で、それぞれ特質が違う行政と協働する事ができるならば、有意義な政策・施策展開が実現されるのではないか…と個人的には思っています。
先週木曜の10/29の夜、中野区内でとあるシンポジウムが開かれました。
私の友人・知人が運営に携わっている中野区内のLGBT当事者団体「中野LGBTネットワークにじいろ」と中野区によって共催された「すべての人々が暮らしやすい中野区をめざして」です。
当日はまず、永野靖弁護士が基調講演を行ないました。引き続き、田中大輔中野区長、田辺裕子教育長、山田正興医師、大江千束LOUD代表、永野靖弁護士によるパネルディスカッションが行なわれました(司会:山縣真矢 東京レインボープライド共同代表)。
シンポジウムの中で田中区長は、
「区民や職員が理解する機会を増やし、偏見を排して多様性を認め合える社会を作っていくために努力したい」
「ユニバーサルデザイン型の社会を目指す」
との発言を行ないました。田中区長が言う「ユニバーサルデザイン型の社会」は、「多様性(ダイバーシティ)を尊重する社会」にも言い換えられると思います。
私は普段から中野区議会をよく傍聴します。それで、住み替え支援事業やDV被害者支援などにおいて同性カップルを対象とする旨、田中区長や担当者が答弁しているのを実際に現場で耳にしています。
なので、今回のシンポジウムにおける田中区長の発言も、非常に「らしい」発言だなと思いました。良い意味でリップサービスをせずに、実効性のある個別的施策を目指すという点について、個人的には非常に好感を持っています。
なお、「個別的施策の中で対象に含める」という方向性は、かつて男女の事実婚カップルが取った戦略と共通するものがあります。その意味で、中野区におけるLGBT政策・施策は「事実婚アプローチ」と言えるかもしれません。
さて、日本国憲法第92条には、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」という規定があります。ここで言う地方自治の本旨とは、
(1)住民自治-住民自らが地域のことを考え、自らの手で治めること。つまり、地方自治は、その地域社会の住民の意思によって行われるべきこと。
(2)団体自治-地域のことは地方自治体が自主性・自立性をもって、国の干渉を受けることなく自らの判断と責任の下に地域の実情に沿った行政を行っていくこと。つまり、地方自治は国(中央政府)から独立した地域社会自らの団体(組織・機関)によって行われるべきということ。
の2つを指すと言われています。
つまり、自治体が自らの権能の範囲内で、国からの干渉を受けることなく、住民による意思決定に基づいて政策・施策や行政の在り方を決められるのが地方自治なのです。
となると、政策課題について、各自治体によって異なるアプローチが存在することになります。例えば同性カップルの保障という課題について見ると、
・渋谷区:条例を区議会で通し、その条例にに基づき、当事者が区へ申請を行ない、区がパートナーシップ証明書を発行
・世田谷区:首長の権限で策定される要綱に基づき、当事者が区へ宣誓を行ない、区が宣誓受領証を発行
・中野区:個別分野の政策・施策の対象に同性カップルを含み込ませる(事実婚アプローチ)
と三者三様です。
その自治体を取り巻く事情や状況に応じて(そして最終的には住民の判断に基づき)、政策・施策が各自治体で行われれば良いわけです。そこに優劣は存在しません。
もし、各基礎自治体(いわゆる区市町村)での取り組みに差異があることで不都合が生じるならば、その時は広域自治体(いわゆる都道府県ですね)や国へ、条例や法律・通達等の改正や新たな立法を働きかければ良いのです。
さて、最後にLGBT関連の政策・施策に関して、自治体における行政や議会へのロビイング、若しくは行政との協働を考えているみなさんへ。
以下のような要素を複合して分析した上で、どのような手法をとるべきか判断することをオススメします。行政や議会の状況に応じて柔軟に対応することが、ロビイングや協働では大切です。
・首長(基礎自治体では区市町村長)の意識やヤル気の有無
・議会における会派構成(分かりやすく言えば、「どの会派が○議席持っている」とか、「どの会派がキャスティングボートを握っているか」など)
・意識やヤル気のある行政職員の有無
・上記のような、意欲的な行政職員を後押しできるような議員の有無。こうした議員にロビイングすることも重要です。
(言い換えれば、「行政に対して何でも反対」な議員は、職員の問題意識やヤル気を削ぐ可能性があるという事です^^;)。
市民側がこうした分析を行なった上で、それぞれ特質が違う行政と協働する事ができるならば、有意義な政策・施策展開が実現されるのではないか…と個人的には思っています。
地方自治と私
2015-11-06
北大法学部で政治学履修コース~修士課程所属だった90年代後半~00年、北海道地方自治土曜講座(法学部の大きい8番教室で開かれていた)という、市民にも開かれた地方自治講座を任意で(=個人的に楽しみにして^^;)受けていました。
http://sky.geocities.jp/utopia2036/doyokoza/
私が、土曜講座を受けていたのは、96年頃~00年で、その頃のプログラムは、以下のリンク先のような感じ。
http://sky.geocities.jp/utopia2036/doyokoza/1995-2001.html
今振り返ると(というか、振り返らずとも当時から既に)、錚々たるメンバーの講義を受けていたんだなぁ、とちょっとした感慨。
今年お亡くなりになった松下圭一先生や、つい先日お亡くなりになったばかりの篠原一先生の講義も、そういえばここで受けていたのです。
修士課程時代(99~01年)は、北海道町村会から派遣されているニセコ町(=現民主党代議士の逢坂誠二さんが若手町長だった)の職員さんが同期にいました。さらに同じ研究室に自治体職員志望の同期がいたりと、地方自治について話す事が非常に多い環境でした。
また、修士課程時代、木佐茂雄教授(現 九州大学法学部教授) の講義を取っていた時には、「札幌地方自治法研究会」へ参加しました。その流れで、99年7月には島根県大田市で開かれた、自治体法務合同研究会に同期達と一緒に参加しました。
http://jititaihoumupark.web.fc2.com/04-03.htm#04-03top
そうした環境に身を置く傍ら、私は、キャンパス近くにあった「北海道内のNPOをネットワーキング&サポートするNPO」の事務所によく出入りをしていました。また、某政党の北海道議さんと市民による政策勉強会にもメンバーとして参加していました。
こうした流れの中で、現 朝霞市議 くろかわしげるさんや、(田口晃先生のゼミ同期でもある)現 札幌市議 かんの太一くんとも知り合いました。
私が各種NPOに携わっていた1990年代後半、NPO界隈でキーワードとなっていた言葉は「協働」です。
「協働」とは、それまでとにかく対立的な立場にあった行政(主に基礎自治体)と市民が各々の特性を活かし、共通の政策や施策目的に対して活動することで、今までにないものを創り上げていくことです。
21世紀に入ってからの10年間は、性的マイノリティの活動(執筆やパレード運営、同性パートナーシップの問題)に注力するようになりました。
が、2011年、連れ合いが自治体議員になってからは、地方自治に関して今までの経験や学んできたことを活かせるようになってきました。
それと同時に、「基礎自治体におけるLGBT政策・施策を、市民と行政との協働により進めていくこと」について深く考えるようになってきました。
…というわけで、私のブログにしては珍しく、連作もののエントリーです。詳しくは次回へ続きます!
渋谷区・世田谷区での同性パートナーシップ証明発行開始に寄せて
2015-11-06
昨日は色々と所用が立て込んでいたのですが、祝・渋谷区&世田谷区 同性パートナーシップ証明発行開始ということで、夜に連れ合いと一緒にフラッとirodoriさんへ立ち寄りました。
irodoriさんでは、昨日、渋谷区で同性パートナーシップ証明を無事受け取った、東小雪さん・増原裕子さんを囲んだパーティーが開かれていました。
久しぶりに会うお知り合い、そして初めて実際にお会いするSNS繋がりの方とも楽しくお話ができました。
渋谷区・世田谷区で昨日、同性パートナーシップ登録を行なったみなさん、あらためて本当におめでとうございます!
今回、ご尽力なされた両区の区議さん、首長さん、有志の区職員さん達の動きがあってこその、この動きだと思います。本当にありがとうございます!
そして、このアジェンダにおける「市民と行政との協働」に先鞭をつけた、両区在住の当事者や支援者のみなさんへ、心からの祝意と敬意を。
また、今日の状況が存在するのは、性的マイノリティの可視化に向けて様々な分野で活動されてきた諸先輩のお力に寄るところが非常に大きいと思います。そうした諸先輩の皆さんへも、感謝を捧げたいと思います。
irodoriさんでは、昨日、渋谷区で同性パートナーシップ証明を無事受け取った、東小雪さん・増原裕子さんを囲んだパーティーが開かれていました。
久しぶりに会うお知り合い、そして初めて実際にお会いするSNS繋がりの方とも楽しくお話ができました。
渋谷区・世田谷区で昨日、同性パートナーシップ登録を行なったみなさん、あらためて本当におめでとうございます!
今回、ご尽力なされた両区の区議さん、首長さん、有志の区職員さん達の動きがあってこその、この動きだと思います。本当にありがとうございます!
そして、このアジェンダにおける「市民と行政との協働」に先鞭をつけた、両区在住の当事者や支援者のみなさんへ、心からの祝意と敬意を。
また、今日の状況が存在するのは、性的マイノリティの可視化に向けて様々な分野で活動されてきた諸先輩のお力に寄るところが非常に大きいと思います。そうした諸先輩の皆さんへも、感謝を捧げたいと思います。