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しがないゲイが考えていること。

映画『MILK』試写会に行ってきました


 3月24日(火)、九段会館で行なわれた映画『MILK』の試写会に行ってきました。映画公開まで楽しみに待つつもりだったのですが、さる筋から招待券をいただき、パートナー氏、そして友人を誘って仕事後に足を運んだのです。

 映画『MILK』は、1977年、ゲイであることを公表して公職選挙(サンフランシスコ市 市政執行委員選挙)に当選したハーヴェイ・ミルク(映画本編及び公式サイトでは表記が「ハーヴィー・ミルク」)の人生最後の8年(1970~1978年)を描いた作品です。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、『MILK』は第81回アカデミー賞で主演男優賞(ショーン・ペン)と脚本賞(ダスティン・ランス・ブラック)を受賞しました。

 ミルクは1973年と1975年のサンフランシスコ市政執行委員選挙、そして1976年のカリフォルニア州議会議員選挙にそれぞれ落選したあと、1977年のサンフランシスコ市政執行委員選に当選しました。当選後は(映画本編でも取り上げられている)犬の糞の放置に罰金を科した有名な条例制定に尽力しました。また、(やはり映画で取り上げられ、後半のストーリーのメインになった)同性愛者やその支援者を教職から解雇することを認めるカリフォルニア州条例「提案6号」の否決に力を注ぎました。

 「提案6号」は1978年11月に州民投票により否決されますが、直後の1978年11月27日、ミルクは前の執行委員ダン・ホワイトによって市庁舎でジョージ・マスコーニ市長とともに射殺されました。ミルクの葬儀の晩に自然発生したキャンドルライトによる追悼の通夜には何千人もの人が参加しました(映画の終盤で描かれています)。


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 もっと細かいストーリや背景は公式サイトに譲るとして、ここからは感想。


 アカデミー賞の主演男優賞を獲るだけあって、ショーン・ペンの演技は素晴らしいです。それも、単に「熱演」と一言では片づけることができないくらいに。パートナーであるスコットやジャックとのやり取りでは弱い部分がぽろっと出てきたり、後半になると政治家としてのしたたかな部分が感じられたりと、ショーン・ペンの演技を通してミルクの生身の人間としての部分が描かれていてホッとします。それがあるからこそ、ミルクが人々を惹きつけていくというストーリーに説得力が出ようものです。


 映画自体の構成としては、暗殺の危険を予知していたミルクが、暗殺された場合に再生されるようテープにメッセージを吹き込みながら過去を回顧する形式を取っていています。実話を基にした映画なので、ミルクが最終的に暗殺されることは分かっているのだけど、暗殺に至る伏線も描かれていて、本当に切ないのです。 


 また、想像していたよりも群像劇だなぁという印象を持ちました。選挙活動に携わっているコアスタッフのキャラクターがそれぞれ立っていて、映画に活気をもたらしていたと思います。実話に基づいた映画なわけですが、最後に、実際のコアスタッフのその後(みんな、各々の分野で活躍している!)が紹介されたときはちょっと感動してしまった。ムーブメントが大きなうねりを起こす時、そこに集まるコアな人たちもまた、ある種特殊なテンションというか「熱」を持っているんだなぁと感じました。



 1970年代当時のアメリカのゲイたちが置かれた厳しい状況を考えると、ゲイ・ムーヴメントが革命的な熱気を持つのは当然ともいえるし、『ミルク』でもそこはしっかり描かれています。ここだけ観ると、「良くも悪くも日本とはだいぶ違うのねぇ」と思う人は多いでしょうし、その革命的な部分が鼻につくという人もいるかもしれません(特にゲイの中には)。

 ただし、『ミルク』が素晴らしいのは、そんな革命的な部分を描きつつ、政治のリアリティもきちんと描いているところです。最初はゲイとしての経験から政治参加を志すようになったミルクが、徐々にサンフランシスコ市民全体の政策課題を考え、訴えるようになったこと。そして「提案6号」否決を目指すキャンペーンにおいて非常に戦略的に振る舞うミルクを見ると、理想を目指すために現実を見据え、立場を異にする他者とも繋がっていくことこそが大切というメッセージが伝わってきます。これはゲイ・アクティヴィストっぽい(笑)感想かもしれませんが。



 最後に極私的感想を。自分としてはパートナーのスコットやジャックの苦悩に一番感情移入してしまいました。自分がこれを言っちゃうのは反則技かもしれませんが、ゲイであることをカミングアウトして選挙に立候補した人物をパートナーに持つ苦悩、痛いほど我が身のように感じてしまいました。ミルクと別れても最終的には活動に関わる人生という面ではスコットに相通ずるところがあると思ったし、人間的に弱い面やダメダメな面はジャックに共感したなぁ。



JUGEMテーマ:おすすめの一本!!(洋画)
 


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