NOV'S BLOG

LGBTやSOGI(性的指向・性自認)に関する政治動向・理論や活動などについて、主に綴っているブログです。

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尾辻さん繰り上げ当選に寄せて

 民主党の室井邦彦参院議員(2007年参院選の比例代表として選出)が今月、民主党離党&議員辞職の意向を示しました。今月9日、室井議員の辞職が参議院で正式に許可されたため、2007年参院選で民主党 比例代表 29位だった尾辻かな子さんが繰り上げ当選ということになります。

 尾辻かな子さんは、2003~2007年に大阪府議会議員(当時の堺市選挙区選出)を務められました。大阪府議時代の任期途中である2005年8月に、ご自身がレズビアンであることを公表し、日本初の同性愛者であることを公言した自治体議員となられました。その後、2007年夏の参議院議員選挙 比例代表に民主党から立候補。38,229票を獲得したものの、民主党で比例29位となり(民主党での当選は20位まで)、落選となりました。その後、昨年12月の衆議院議員選挙に、民主党公認として大阪5区から立候補されましたが、落選となっていました。

 今回の尾辻さんの繰り上げ当選で、同性愛者であることを公言している日本初の国会議員が誕生します。任期は残り約2ヶ月間ですが、大阪府議時代の実績や、2010年から現場で携わってきた福祉の経験などを活かし、尾辻さんならではの取り組みを我々に見せてくださることを、心から期待しています。


 で、ここからは、個人的に思っていることをつらつらと。

(1) 
 尾辻さんの今回の繰り上げ当選で、「2007年参院選の苦労が報われた」「レズビアンアイデンティティ(若しくはLGBTアイデンティティ)を掲げて戦った選挙の、遅れてやって来た勝利だ」という、お祭り的な反応を示す人が一定数いるように見受けられますが、私は個人的にはそうした意見や反応には与しません。

 参院選の比例代表は「政党票」と「政党に属する立候補者の票」を合算した上で、まず政党の獲得議席が決定されます。次に政党内の立候補者の得票数によって、当選者が決定されます。2007年参院選の場合、「民主党」+「民主党の比例立候補者の票」数が非常に大量で、民主党の比例代表では個人得票順に上位から20名が当選となりました。

 尾辻さんは2007年参院選で、ご本人やコアなスタッフの想いもあってか、「レズビアン・アイデンティティ(若しくはLGBTアイデンティティ)」をメインに掲げた選挙戦を展開されました。しかし、上記のような民主党好調の状況下で、民主党の比例代表全35名中29位という結果は、率直に言って「大敗」であったのだろうと私は思います。

 今回の繰り上げ当選は、この5年10ヶ月で民主党参議院議員の途中辞職や離党、そして民主党参議院議員や比例名簿搭載者の死去(お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げます)が相次いだことに伴う、あくまで「僥倖」「棚ボタ」であると私は思います。結果的に尾辻さんが繰り上げ当選になったからといって、「LGBTアイデンティティの勝利」と総括する空気が支配的ならば、6年前の「敗北」は活かされないことになるのではないかと、私は個人的に危惧してさえいます。

 LGBTと言っても、富裕層もいれば貧困層もいる。病気や障がいを持っている人もいれば、(今のところ)病気や障がいがない人もいる。政治的な信条についても、左派の人も右派の人も中道の人もいる。自分の生活やステータスによって、政治に求める優先課題は人それぞれで、LGBTだからといって、必ずしもLGBTイシューに最優先で反応するわけではない。2007年の尾辻さんの敗北、そして私の連れ合いでもある石坂わたるの中野区議選における敗北から、あらためて個人的に学んだことは、考えてみれば至極当然なことです。

 また、一人のLGBTだけでは、複雑さを孕むLGBT全体の利害を背負うことはできません。まして議員ともなると、LGBTだけでなく有権者全体の代表でもあるわけですから、当事者議員であっても、LGBTの問題だけに特化した動きをとることは非常に困難です。つまり、当事者議員は、アクティヴィストでは決してないということです。

 結局、LGBTが現実的に政治を動かすには、各々が自分と考え方の近い(若しくは自分が支持する)政党や議員(当事者か否かを問わず)をいかに動かすかという点に尽きると思います。

 あなたが人権や公正を重視する中道左派的な政治信条を持っているのであれば、そうした考えを持つ政党や議員に「人権とLGBTの観点」「LGBTと社会的包摂の観点」から、現実的に動いてもらうようにアクセスしてみる。あなたが経済的な自由主義をより重視する立場であれば、そうした考えを持つ政党や議員に対して、経済政策面でLGBT施策を打つことの有用性を説いてみる。あなたが保守思想の持ち主であるならば、そうした考えの政党や議員に対して、LGBTもまた「Nation」や地域コミュニティの一員であり、実体的な「絆」(あくまでカッコつきですが)を形成しようとする人たちであると説いてみる。今、求められているのは、こうした地道な動きなのではないかと個人的には思っています。

 実は昨年末の総選挙期間中、一人の知人として、衆議院大阪5区の尾辻さんの事務所を訪問し、街頭での活動も見学しました(と言っても、わずか半日でしたが)。尾辻さんは、ご自身がここ数年携わった福祉の観点、そしてリスクの社会化やセーフティーネットの必要性の観点から、説得力のある演説をなさっていました。そこにあるのは、「中道左派的な問題意識を持つ政治家で、なおかつレズビアンであることを隠していない、尾辻かな子さん」の姿でした。私はそんな尾辻さんの姿がとても好ましく思えました。

 「LGBTであれば右から左まで」のような雰囲気が尾辻さん陣営にあった2007年参院選と違って、2012年総選挙では、例えば自民党支持票も共産党支持票も日本維新の会支持票も得られなかったでしょう。でも、それで良いのだと思います。尾辻さん本来の持ち味である中道左派な問題意識を基軸として、民主党の中で一政治家として頑張っていくことこそが、長期的に見て非常に意義のあることだと個人的に感じています。民主党以外の他党でも、その党の政策や問題意識と折り合いをつけながら、しっかりと議員を務めるLGBT当事者が今後現れたとしたら、私はやはり好ましく感じるであろうと思います。


(2)
 「議会の中の多様性という観点」から言うと、国会の中にLGBT当事者議員がいた方が絶対良いに決まってる(と個人的には思う)。でも、個人の尊厳や人権・いのちが絡む問題や政策については、当事者性やカミングアウトは実はあまり関係ないかな、とも思う。

 連れ合いが自治体議員として当選して以来、私も各党派の議員さんや支持者の方々と話す機会が増えたけど、非当事者であっても、党派を問わずLGBTが抱える問題について共感する人が少なからずいることに気づきました。

 また、私は特別配偶者法全国ネットワーク(通称:パートナー法ネット)の共同代表として、ここ1年間、各党派の国会議員へのロビイング活動を行なってきました。その中で、LGBTの抱える問題について従来から理解のある左派や中道左派的な政党の議員のみならず、中道右派や右派の政党の中にも、協働可能な議員がいることを発見しました。先日5月14日には、自民党国会議員有志の方々との「性的マイノリティに関する課題を考える交流会」が開催され、私も参加いたしました(ご参加くださった馳浩衆議院議員が、同日付のブログ記事で触れてくださっています)。


 なので、議員の党派性や当事者性を問わず、問題意識の共有や協働が可能な議員を発掘していく/育てていくという姿勢こそが重要なのだと思います。

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プロフィール

赤杉康伸

Author:赤杉康伸
赤杉康伸(通称:NOV)

1975年5月、札幌市生まれ。2001年3月下旬から東京在住。2001年3月、北海道大学大学院 法学研究科修士課程(専修、公共政策コース)を修了。

札幌・東京における性的マイノリティ中心のパレード運営に参画。その間、2004年7月には、共編著で「同性パートナー -同性婚・DP法を知るために-」(社会批評社)を出版。

現在、東京メトロポリタン ゲイフォーラム 共同代表。NPO法人 共生社会をつくるセクシュアル・マイノリティ支援全国ネットワーク 理事。特別配偶者法全国ネットワーク メンバー。

当面は、近況報告や政治関連の記事をアップ予定です。「複雑な現実に向き合いながら折り合いをつけ、相手に『敵方』のレッテル貼りをせず、まずは対話を重視する政治」「多様な人々の、多様な利害を調整する政治」がモットー。

Twitterはこちら。メールはy.akasugi@gmail.com まで

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