NOV'S BLOG

LGBTやSOGI(性的指向・性自認)に関する政治動向・理論や活動などについて、主に綴っているブログです。

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閉じるな。篭るな。

 昨日のエントリーで予告した、幻(?)の原稿、アップします。が、その前に少しだけ解説を。



 ご存知の方も多いと思いますが、私は、今春の石坂さん選挙における敗軍の参謀です。敗軍の参謀が、今年一連の選挙の総括や分析するのはおこがましいかなぁと思いましたし、今でも「お前が言うべきではない」と思っている方も多数いるかもしれません。私自身、そんな思いもありましたし、参院選や各地のパレードを控えた時期に誤解や混乱を避けるべきという思いもあり、ここまで表立って沈黙してきました。AAJを長らく休んでいたのは、自分の中で「自主的謹慎」という思いも実はありました。



 ただし、石坂さん選挙の経験を通じて、いわゆる「当事者コミュニティ」の内部だけで熱狂する選挙戦では限界があると、私はずっと思ってきました(もちろん、「内部だけで熱狂」という意図は無かったと思うのですが、外部にそう取られるならば、それは結果的に同じことかと)。石坂さんの落選当日、某新聞の記者さんと石坂さん、赤杉の3名で夜遅くまで分析を交えて話し合ったのですが、やはり、性的少数者という看板だけを打ち出すだけでは、有権者への浸透に無理がある。



 私と考えを同じくされる方の中には、参院選期間直前や期間中にコアスタッフに忠言される方もいらっしゃったようなのですが、結果から言うと、その忠言はなかなか活かされなかったように思います。



 選挙後、「なぜ、コミュニティに浸透しなかったのか?」という分析や議論はなされているようですが、それに比べると、「なぜ、いわゆる『当事者』じゃない人と問題意識をシェアできなかったのか?」という視点が欠けているように個人的には感じています。本文にも書いていますが、中野区における石坂さんの得票と尾辻さんの得票の差を考えると、それこそが必要な分析だと思うのですが。



 前置きが長くなりましたが、本編、以下に掲載します。







2007年は選挙イヤーだった



 唐突ですが、2007年は地方自治体の首長や議員を選ぶ春の「統一地方選挙」(4年に1度)と、国会の片方を構成する参議院(もう片方は衆議院)の議員を選ぶ夏の「参議院議員選挙」(3年に1度、総数の半分ずつ改選)が重なる、12年に1度の年なのでした。そんな2007年、性的少数者の当事者であることを公表して、選挙に挑戦する人たちが相次いで登場しました。



 まずは春の統一地方選挙。2003年、東京都 世田谷区議選で性同一性障害であることを公表し、見事当選した上川あやさんが再選に向けて挑戦(前回選挙後、戸籍上の性別は男→女に変更済み)。三重県の四日市市議選にはMTF(男性から女性)トランスジェンダーの小路ゆかりさん、大阪府守口市議選ではMTFトランスジェンダーの永瀬ゆきさん、そして東京都 中野区議選からはゲイの石坂わたるさんが、それぞれ自分のジェンダーやセクシュアリティを公表しながら選挙に挑戦しました(ご存知の方もいるかもしれませんが、石坂さんは赤杉のパートナーでもあります)。



 さらに、7月の参議院議員選挙では、2005年にレズビアンであることを公表した前大阪府議会議員の尾辻かな子さんが、民主党公認候補として全国比例区に挑戦しました。国政選挙に同性愛者であることを公表して挑戦するのは、1970年代から90年代にかけての東郷健さん(ゲイ)以来の出来事でした。また、国内の主要政党から同性愛者であることを公表して国政選挙に挑戦するのは、尾辻さんが日本で初めてのケースでした(なお性的少数者全体で言えば、2005年衆議院議員選挙に茨城3区から社会民主党公認で立候補したFTM(女性から男性)トランスジェンダーの猿田玲さんが、尾辻さんに先立って主要政党から国政選挙に挑戦した例となります)。





性的少数者であることを掲げる選挙の難しさ



 統一地方選挙、上川さんは世田谷区議選2位当選という見事な結果を残すものの、他の3名は残念ながら落選。さらに尾辻さんも全国を飛び回り精力的に選挙活動を行ない、38,230票を獲得するものの、当選には至りませんでした。



 さて、ここに興味深い数字があります。「1091票」と「483票」。



 1091票は石坂さんが中野区議選で得票した数。483票は尾辻さんが全国比例区のうち、中野区で得票した数です。中野区が主戦場である石坂さんが、とにかく有権者に顔を覚えてもらうために小まめに区内で街頭演説したり、選挙期間中は掲示場で選挙ポスターを貼れた一方、尾辻さんにとって中野区は全国沢山ある地域の一つで、全力を投入できなかったという違いはもちろんあります。が、新宿2丁目にも程近く、性的少数者が多く住む地域の一つとされる中野区で、予想外にダブルスコア以上の差がついてしまいました。



 候補者のパートナーとしての立場から明かすと、石坂さんは「ゲイであること」に加え、「教育・福祉の専門家であること」(石坂さんは養護学校教員として、選挙前月まで5年間勤務してきました)を、自身の大きな柱の一つとしてきました。選挙準備活動や選挙戦を行なっていく中で、当初、「ゲイであること」への食いつきは悪くとも、「教育・福祉」の問題に関心を示し、その後、「ゲイであること」に由来する法的・社会的な不都合に思いをはせる有権者が徐々に増えてきたように思いました。私が実際に受けた印象では、子どもを持つ女性や単身者の方々が、特に石坂さんの街頭演説に耳を傾けてくださったように思います。それでも石坂さんは当選ラインをかなり下回ってしまったので、もっともっと色々な方の共感を得る努力が不足していたのは紛れもない事実です。しかし、方向性として全てが間違いであったわけではない、とも思っています。



 石坂さんの選挙戦後、「もっとゲイであることをアピールして、性的少数者の問題に特化した選挙を展開すべきだった」という意見をもらうことも多々ありました。もちろん、性的少数者であることを掲げて選挙に挑戦すること自体、「性的少数者が自分の身近なところに、ましてや政治の場になど存在するはずがない」とされてきた日本においては勇気が要ることであるし、画期的であることには間違いありません。しかし、「性的少数者に対しては、性的少数者の抱える問題さえ訴えればよい」という前提こそ、当事者のことを無意識のうちに軽視しているように私は思います。



 例えば、同性パートナーシップの法的保障の問題一つとっても、婚姻や家族制度などの大モトである民法改正に加えて、税制、社会保障制度、教育関係制度、そして公営住宅法(公営住宅の入居要件は、婚姻しているカップルと原則的に規定している)・・・など、様々な分野に関係します。一つの課題が、実は政治全体に直結しているわけです。ですから、政治全般における課題やビジョンを示さずに性的少数者の課題解決を訴えるという方法に対しては、少々厳しく言えば、「実現具体性に乏しい」という批判も可能になります。



 今まで政治を避けてきた性的少数者に、振り向いてもらわなければならない。だけれど、政治全体の課題を示して、関心を持ってもらうこともしなければならない・・・。性的少数者であることを掲げて選挙を挑戦する上での難しさの一つは、ここに端を発するものではないかと、自分の経験を振り返って赤杉は思うわけです。





議員は誰の代表?



 政治は、「さまざまな立場・考え・利害などを調整し、問題を解決する場」です。みんなが同じ考え、価値観であれば、「調整」「解決」なんて作業は必要ありませんしね。調整・解決にあたっては、「性的少数者なんてキモイ」と考えている人もいれば(過去のTMGFアンケート調査を見ると、政治家の中でも実はいるのよ)、「性的少数者の問題は大変だと思うけど、自分には関係ないし」と思っている人も交渉相手になってくるわけです。たとえ、性的少数者の支持を得て当事者議員が選出されたとしても、それだけで問題は「調整」・「解決」されません。色々な層を相手に共感を得ていくことが不可欠です。



 ここで言うところの「共感」とは、「同情」のことを指しているわけではありません。「性的少数者が抱える問題が、実は誰の身にも起こり得る」という可能性に対する「想像力」を喚起できるかどうか、という問題です。例えば、同性パートナーが抱える法的課題のうちの幾つかは、配偶者を亡くした後の残された者や事実婚カップル、単身者、そしてDINKS(子どものいない共働きカップル)と共有され得るかもしれません。性的少数者というフィルターを通じて政治全体の問題を指摘していくことで、その主張に深みが出てくるのです。



 また、逆に性的少数者には直接関係ないと思われている問題に対しても、私たちは想像力を働かせることが必要なわけです。例えば、「福祉」というと何となく「弱者のための」というイメージがあるけれど、誰でも歳を重ねれば体力や身体機能は落ち、若い頃のようには生活できなくなる人も多くなります。年齢に関係なく、心身ともに障がいを持つ事だって、いつでもあり得ます。「当事者性」というのは、実は誰もが持っているものなのです。



 たとえ、ある層の支持を得て当選したとしても、議員というのはあくまで「有権者全体の代表」であるわけです。「有権者全体」に対して想像力を喚起する能力、そして意見を異にする交渉相手との調整能力など、議員活動においてはある種のプレゼン能力が求められてきます。今後、選挙を目指そうとする性的少数者、そして性的少数者の議員が誕生してほしいと願っている人にとって、ここを見極める力が重要なポイントではないかと思うのです。

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プロフィール

赤杉康伸

Author:赤杉康伸
赤杉康伸(通称:NOV)

1975年5月、札幌市生まれ。2001年3月下旬から東京在住。2001年3月、北海道大学大学院 法学研究科修士課程(専修、公共政策コース)を修了。

札幌・東京における性的マイノリティ中心のパレード運営に参画。その間、2004年7月には、共編著で「同性パートナー -同性婚・DP法を知るために-」(社会批評社)を出版。

現在、東京メトロポリタン ゲイフォーラム 共同代表。NPO法人 共生社会をつくるセクシュアル・マイノリティ支援全国ネットワーク 理事。特別配偶者法全国ネットワーク メンバー。

当面は、近況報告や政治関連の記事をアップ予定です。「複雑な現実に向き合いながら折り合いをつけ、相手に『敵方』のレッテル貼りをせず、まずは対話を重視する政治」「多様な人々の、多様な利害を調整する政治」がモットー。

Twitterはこちら。メールはy.akasugi@gmail.com まで

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